2回にわたってお届けした,立山を飛び出して富山県内の各地をご紹介するシリーズの氷見編,

立山を眺めに氷見にも行こう!

氷見にも行こう!実食編~肉も魚も食べつくせ!!

の番外編,立山。以外のお酒③ 八代仙 をお届けします。
(以前の記事はこちら①こちら②をご覧ください)

 

氷見にも行こう!実食編でもお届けした,『氷見曙 髙澤酒造』さんのお話を少しさせてください。
髙澤酒造さんは氷見の老舗の酒蔵。創業は明治5年といいますから,もう150年近い歴史を誇る蔵なんですね。
主要銘柄は「曙」。
この名前に縁があって,第64代横綱,曙関の横綱昇進パーティーの際にこちらの曙の酒樽で鏡割りが行われたそうです。
現在の蔵の責任者は高澤 龍一さん。
まだ若い跡取りですが,平成12年から蔵元杜氏として伝統ある蔵を取り仕切っています。
蔵元杜氏というのは,蔵の責任者である蔵元と,お酒作りの責任者である杜氏を兼任している人のこと。
日本の酒蔵は伝統的に,オーナーである蔵元と杜氏は別々の人が役割分担していることがほとんどだったんですが,最近は若い蔵元を中心に経営だけではなく,仕込みまで行う蔵元杜氏が増えてきています。
実際髙澤酒造さんも龍一さんが跡を継いで酒造りを始めてから品質がグングン上がっているという評判です。
ただ,若さに任せて自分のやり方でお酒を醸すのではなく,氷見にも行こう!実食編でもお伝えしたように,昔ながらの槽(ふね)を用いてお酒を搾ったりと伝統的な酒づくりの手法を大事にしつつ,一本一本丁寧にお酒を仕込んでおられます。

その髙澤酒酒造さんのお酒の特徴といえば,氷見のお魚との相性が抜群なことでしょう。
料理との相性を大事にし,目立ちすぎず,かつ隠れすぎずに飲み飽きのこないお酒。
そんな最高の食中酒を目指して造られた髙澤酒造産のお酒の中でもお薦めの一本がこちら。

 

 

『有磯曙 獅子の舞』です。

こちらのお酒は富山県産の代表的な酒米,五百万石を50%まで研いで仕込んだ吟醸純米酒。
吟醸酒と言っても吟醸香はそこまで強くなく,お米の旨みがしっかりと感じられるお酒です。
酸味も程よく残っていて,ブリやノドグロなどの脂の乗ったお魚との相性は◎。
魚を食べた後にこの獅子の舞を一口飲み込むと,脂をすっと流しさりながら,魚の旨みを口の中いっぱいに開かせ,お酒自体もさらに美味しく感じられます。
こういうのこそ,マリアージュと言うんでしょうね。
文句なしに美味しいお酒です。

ただ,髙澤酒造産のお酒の中で今回特にご紹介したいのがこちら

 

 

八代仙(はったいせん)です。

このお酒,実は髙澤酒造さんのお酒のなかではちょっと変わったお酒なんです。
一言で言うと,白ワインのようなお酒。
口の中に含むと酸味がキリリときいた引き締まった味で,鮮烈な香りがたちのぼります。
初めて飲んだ時,富山にこんなお酒があるのかとびっくりしたのを今でもはっきり覚えています。
冷蔵庫でキンキンに冷やして,ワイングラスで頂きたいお酒ですね。
お米の旨みをしっかり活かした,日本酒らしい日本酒を醸しておられる髙澤酒造さんの中ではまさに特異な存在。
実際,龍一さんに八代仙が好きだと言うと,「他のお酒も飲んでよ」とちょっとだけ嫌な顔をされます(冗談ですよ)。
どうしてこのお酒だけキャラがこんなに違うのかというと,原料のお米に秘密があります。
このラベルをご覧ください。

 

 

「米生産元 くるみ営農組合」
とあるのがわかるでしょうか?
この八代仙は地元氷見の組合が生産している「春陽」というお米を使っています。
日本酒通でもほとんど聞いたことのない米の名前ではないでしょうか。
それもそのはず,実はこの春陽というお米は腎臓病や糖尿病患者など,タンパク質制限が課されている人のために開発された,「低タンパク米」なんです。
くるみ営農組合さんも地元の病院の入院患者さんのためにこのお米を生産されているんですが,八代仙はこのお米で醸されています。
お酒造りの最初の工程はお酒を研ぐ,つまり削ることです(実際,上の獅子の舞の精米歩合も50%,つまりお米を半分削っているわけです)。
その理由は,お米に表面にある糠やタンパク質など,お酒の雑味になる原因を取り除いて,心白とよばれる中心部分だけを用いて,スッキリとした香りの良いお酒を醸すためです。
ところがこの春陽というお米は元々タンパク質が少ないお米なので,白ワインのような香り高いお酒になるというわけです。

ただ一つ,この八代仙には大きな問題が…
それは生産量が少ないということ。
元々患者さんのためのものなので,お米の生産量自体が少ないです。
実際,髙澤酒造さんも八代仙は毎年タンク一本分に満たない位の量しか造れないそう(今年はタンク一本分仕込めたと聞いています)。
それで県内でもこの八代仙を取り扱っている酒屋さんは数えるほどしかありません。
しかもタンク一本分しか仕込めないということは,味の調整がきかない(通常日本酒はタンクごとに仕込んだお酒を混ぜ合わせて味を均一に調整します)ということなので,同じ八代仙でも毎年ビックリするほど違った味わいになります。今年はどんな味に仕上がったかな?こんな風に頂けるのもこのお酒の楽しみの一つですね。

ということで入手自体が難しいお酒なんですが,せっかくなのでぜひ氷見まで遊びに行って富山湾越しの美しい立山連峰を眺めて美味しいお肉とお魚を頂いて,そして髙澤酒造さんで八代仙を購入してください。きっと良い思い出になると思いますよ。

立山以外の美味しいお酒を取り上げるこのシリーズ,次回はどんなお酒をご紹介出来るでしょうか?
ぜひお楽しみに!