もう今年のお花見は行かれましたか?
花見に欠かせないものと言えば,お弁当とビール。ですよね。
でもそのビールの出荷本数が年々減ってきているようです。
国内ビール大手5社の2016年1-6月累計のビール系飲料(ビール、発泡酒、第三のビール)の出荷量は前年同期比1.5%減で、消費者の節約志向や酎ハイ人気など好みの多様化で上半期は4年連続で過去最低を更新した。
近年若者のアルコール離れも叫ばれている中,発泡酒や第三のビールも加えたビール全体の消費が落ち込んでいるのは気になります。
ただその一方,地域で作られる小規模生産のビール,いわゆる「地ビール」は年々その存在力を高めているようです。
大手メーカーがビール需要の低迷に陥る中、2016年1-8月累計の全国主要地ビールメーカーの出荷量は前年同期を1.1%上回った。2010年に調査を開始以来、主要地ビールの累計出荷量は毎年前年を上回っており、地ビールが着実に消費者のすそ野を広げている事がわかった。
(中略)
こうした中、同期(2016年1-6月)の地ビール累計出荷量は前年同期比4.2%増と健闘した。苦戦する大手5社を尻目に、地ビールメーカーの3社に2社が前年の出荷量を上回り、好調ぶりを裏付けた。
(第7回 地ビールメーカー動向調査より)
確かに最近は大手メーカーも地方で地ビールの生産に乗り出したり,レストランやパブでも地ビールを取り扱っているところが増えてきています。
地域に密着した,小規模生産だからこそ出せる味わいが多くの人の心と喉を引きつけているのかもしれませんね。
そしてそしてここ富山にも,胸を張ってご紹介できる地ビールがちゃんとあるんです。
それで今回はそんな富山の地ビールをご紹介したいと思います。
まずはこちら。
富山の地ビールと言って真っ先に思いつくのがこの「宇奈月ビール」ではないでしょうか。
宇奈月温泉とトロッコ鉄道で有名な黒部・宇奈月はまた立山連峰の伏流から湧き出す水の美味しさで知られます。
その名水と地元「黒部産二条麦」をふんだんに用いて作られているのがこの「宇奈月ビール」です。
トロッコ電車とカモシカをデザインしたラベルもとても可愛いらしいですよね。
では早速頂いてみましょう。
三種類あるうちのまずは「十字峡/ケルシュ」から頂きます。
「ケルシュ」は元々ドイツのケルン地方で醸造されているタイプのビールのことを言います。
グラスに注いだビールは黄金色で,まさしくビール!といった面持ち。
味はスッキリとしていて,キレとホップの軽やかな香りが喉元を通り過ぎます。
日本人が普段飲み慣れているビールに一番近い味わいでとても飲みやすいですね。
万人受けするビールと言えそうです。
続いてはこちら。
「トロッコ/アルト」です。
アルトビールとは,上面発酵で作られるエールビールの一種です。
ビールの製造方法は大きく分けて二通りあり,一般的なビール(ラガービール)は低温で長時間発酵させて作られます。
役目を終えた酵母は底に沈んでしまうため,この製造方法を下面発酵と呼びます。
19世紀に考えられた,わりと新しい製法で。現在流通している一般的なビールは全てこの下面発酵タイプで作られています。
一方エールビール,上面発酵のビールは常温・短期間で作られます。発酵過程で出る炭酸ガスが酵母を浮かび上がらせ,上面で層を作ることから上面発酵と呼ばれています。
下面発酵のラガービールが普及するまで,ビールと言えばこのエールビールのことでした。複雑な香りと深いコクを特徴としています。
前置きが長くなりましたが,この「トロッコ」も上面発酵ビールの特徴をしっかりとだす,深いコクのビールとなっています。
色は濃い赤胴色で,しっかりとした香りが鼻孔をくすぐります。
でも一口頂くと,見た目とは対照的な軽やかな味わいにびっくり。
飲み進めていくうちに,甘みの中に潜む旨みとコクが徐々に姿を表します。
女性にもしっかりアピールできる,美味しくて素敵なビールです。
最後に控えるのがこの「カモシカ/ボック」です。
ボックビールは元々ドイツのアインベック地方が発祥で,ドイツ南部で広く親しまれているビール。
「アインベック」が縮まって「ボック」と呼ばれるようになったと言われています。
ドイツでのボックビールのラベルには雄ヤギが描かれていることが多いですが,これはドイツ語の”Bock”が雄ヤギを意味するため。
でもこの宇奈月ビールではヤギのかわりに,富山の特別天然記念物,ニホンカモシカが描かれていますね。
こうしたラベルの洒落っ気にも,ドイツビールに対するリスペクトや生産者の真摯な取り組みを感じます。
この「カモシカ」はロースト麦芽をふんだんに用いた,いわゆる黒ビールです。
黒ビールというとどうしても個性が強い,飲みにくい,というイメージがありますが,この「カモシカ」は全然そんなことはありません。
苦味はほとんどなく,ローストされた麦芽を基調とする芳醇な香りと甘みが口の中に広がります。
見た目とは裏腹に,ビールが苦手な方でも美味しく頂けるビールと言えると思います。
ゆっくり,じっくりと時間をかけて頂きたいビールですね。
ラベルにある「モーツァルト仕込み」というのは,発酵過程でモーツァルトの音楽を流しながら仕込んでいるところから名付けられています。
もちろんビールにモーツァルトの音楽を聞かせたからと言って美味しくなるわけではない(ビールにはモーツァルトとパンクロックの違いは分からない)んですが,それだけ手間ひまかけてじっくり,しっかり作っているということでしょうね。
三者三様それぞれの味わいを持つ宇奈月ビール。それぞれ単独で飲んでももちろん文句なしに美味しいんですが,「トロッコ」と「カモシカ」を1:1で割って飲むハーフ&ハーフなんて洒落た飲み方もお薦めです。
お値段は350mlで「十字峡」と「トロッコ」が420円,「カモシカ」が450円(ともに内税)となっています。
お買い求めは県内の酒店や大手スーパーのほか,宇奈月麦酒館のHPからお取り寄せも可能です。
今やすっかり富山を代表する地ビールへと成長した宇奈月ビール。
でも富山の地ビールはこれだけではありません。
次回は知る人ぞ知る,富山の隠れた美味しい地ビールをさらにご紹介したいと思います。
どうぞお楽しみに!