(魚と水『うおとみず』:切っても切れない、きわめて親しい間柄のたとえ。故事ことわざ辞典より)
水だんごって聞いたことありますか?
ちょっと不思議な響きですよね,みずだんご。
初めて聞いたんだけど,昔から知っていたような。
食べたことあるような?ないような。
その正体は,黒部市の生地地区に古くから伝わる庶民的な食べものです。
黒部といえば県内でも有数な美味しいお水の湧き出るところ。
米粉と片栗粉で練ったお団子を,その黒部の名水で冷やすところから、「水だんご」という名前がついたそうです。
夏限定のスイーツで,黒部の方たちは水だんごと聞くと,夏がきた。と感じるそうです。
伝統の味なんですね。
その水だんごを初めて世に出したのが黒部の老舗の和菓子「河田屋」さん。
ただ残念ながら,河田屋さんは2012年に惜しまれつつも閉店されたそうです。
その河田屋さんの味を引き継いだ水だんごが食べられるお店が
魚津市にある「藤吉(とうきち)」さん。
ここ,ちょっと不思議なお店なんです。
そもそもは明治30年創業の老舗で,小麦粉や砂糖などをあつかう大野商店という卸屋さんなんです。
その初代のお名前が藤吉(とうきち)さん。
最初ふじよしさんかと思っちゃいました。
(実際間違えられることも多いそうです)
その大野商店さんが5年前に出したお店が
「魚津ご城下の台所 藤吉」さん。というわけです。
ではなぜその藤吉さんが水だんごを提供しているかというと,
河田屋さんに水だんごの原料となる富山産コシヒカリの米粉や片栗粉などを卸していたのが大野商店さん。
河田屋さんが廃業してしまうというのを聞いた現オーナーが,
「伝統の味を途絶えさせちゃいけない!」
と訴えたところ,河田屋さんが
「あなたにならうちの味を引き継いでもらってもいい」
ということで,水だんごの味と紋章をそのまま受けつないだということです。
伝統あるお店同士が志を共有して,味と文化を守っているんですね。
で,その藤吉さんでは水で切った水だんごに青きな粉をかけていただくという一般的な食べ方はもちろんですが,
水だんごパフェも頂くことができます。
水だんごと籐吉さんのオリジナルソフトクリームがコラボした一品。
パッケージのラベルが河田屋さんから引き継いだ紋章です。
水だんごは米粉ならではのねっとりしすぎないモチモチ感に,きな粉の甘じょっぱさがよく合います。
手作りのソフトクリームは甘すぎず,さっぱりとした後味。
近所のおばあちゃんが孫を連れてソフトクリームだけ買いに来る,という話もさもありならん,という感じで,単独で食べても美味しいソフトクリームが水だんごの存在を巧みに引き立てています。
水だんごには砂糖が入っていないので,このくらいのさっぱりとした味わいのソフトクリームがちょうどいいんでしょう。
まさに水だんごが主役!のパフェです。
もう一品,ムース・オ・フランボワーズもいただきました。
これもね,絶品でしたよ!
フランボワーズムースが濃厚で,間に挟まれたジュレが程よい酸味でペロリといただけちゃいます。
しかもコーヒーとのセットで¥500!コスパ抜群です(ちなみに水だんごパフェは¥600,こちらもお得)。
ここまで来て気付かれましたか?
藤吉さん,「魚津ご城下の台所」を名乗っているんですが,すごく感じの良いカフェでもあるんです。
店内の様子がこちら。
広い空間を贅沢に使ったモダンな内装で,ゆっくりと時間を過ごすことができます。
ちなみにこの設計を手掛けたのはオーナーのご友人だとか。
でも藤吉さんの引き出しはこれだけじゃぁありません。
実は店内に入ってすぐに目に入るのが,店長の大野さん選りすぐりの食材や調味料など
こんなのや
こんなのが置いてあります。
店内を見渡すと他にもグルテンアレルギーに対応した,米粉でできたホットケーキミックスや,卵・乳製品・砂糖不使用のアップルパイなども人気だとか。
ただ大野さん曰く,
「無添加や自然食品的なものを集めたのではなく,美味しいものを探し求めたら自然とそうなった」
のだとか。
いくら体に良くても美味しくなかったらヤですもんね。納得です。
実際店内にある商品は大野さんが自ら選び抜いて,生産者と直接お会いして置いてあるものだけとのこと。
それでもスタッフ間のプレゼン&試食を経て商品として扱うのが許されるのはほんの一部だとか。
そういう意味でも選りすぐりのものばかりが集められているわけです。
(個人的には写真にもある小豆島産のお醤油がとても美味しくてお薦め!)
他にも様々な手作りの惣菜を買って帰ることもできます。
ね,ちょっと不思議なお店でしょ?
ランチを食べに行くのも良し,カフェとしてゆっくり時間を過ごすのも良し,色々な美味しいものを探しに行くのも良し,
と色々と楽しめる藤吉さんですが,
水だんごの伝統を引き継いだ和菓子屋さんとの繋がり。
素敵なお店の設計を手掛けたご友人との繋がり。
わたしたちと食材を結ぶ生産者さんとの繋がり。
と,色々な人との繋がりによって紡ぎあげられたあたたかな空間こそが,味わうべき藤吉さんの真髄ではないでしょうか。
ごちそうさまでした。