美味しくて,でもまだあまり全国的には知られていない富山のお酒を紹介する第二弾。
今回は林酒造の「林」を紹介します。
林酒造さんは富山県の最東,朝日町に構える県内でも最古の醸造所。
創業が寛永三年(1624年)といいますから,400年近い歴史を持つ酒蔵です。
その林酒造産の主力商品は「黒部峡」。
林酒造という名前を知らなくても,「黒部峡」の名前を知っている富山人は多いと思います。
でも今回紹介するのはその「黒部峡」ではなく,「林」というお酒。
どういうお酒でしょうか?
林酒造さん,非常に歴史のある酒蔵ですが,実は最近杜氏さんが新しくなりました。
この蔵の跡取りである林秀樹さんが県外で修行を積んだ後,数年前に20代の若さでお酒造りの総監督である杜氏として戻ってこられました。
その際に,もっとこだわりぬいたお酒を醸したい!という思いで取り組み,生み出されたのが自身と酒蔵の名前を冠した新しい銘柄,「林」というわけです。
「林」として初めて仕込んだのが平成24年と言いますから,本当に県内でもまだまだ知らない人がほとんどの,新しいお酒です。
しかしそのこだわり具合は半端ありません。
実は「林」には原材料となるお米の種類別に,4種類の「林」が存在します。
「林 五百万石」,「林 雄町」,「林 美山錦」,そして「林 山田錦」。(以上全て純米吟醸)
林のあとに続くそれぞれが酒米の名前です。
もちろんそれぞれ個性も味わいも違ったお酒になるお米たちです。
普通,酒蔵は目指すお酒の方向性やその蔵の得意とするお米の品種といったもので使う酒米はだいたい決まっています。
(ちなみに富山では五百万石が多く用いられています)
しかし,「林」においてはそれぞれの酒米の個性を追求した,こだわりのお酒を醸したいという思いからか,上記の4つの「林」が存在するわけです。
ところが今年はその4つのうち,「雄町」は登場しませんでした。
杜氏である林秀樹さんが「雄町」の出来に納得できず,商品として出さなかったということなのです。
それほどこだわりと信念を貫いて醸されているのが「林」というお酒なのでしょう。
今回頂いたのはそのうちの「林 山田錦」です。
早速口に含むと,スッキリとした飲み口とともに,上品なお酒の甘みが口の中に広がります。
その後山田錦特有のしっかりとした旨味とともに,キリリとした酸味が全体を支配します。
最後にもう一度,鼻孔の中に発酵を思わせる甘い香りが漂い,程よい余韻を残させます。
絶妙。
以前に五百万石も頂きましたが,こちらの方が旨味と酸味が際立っている感じを受けました。
ただ,どちらも美味です。
この時期に出荷されるお酒ですから,当然十分熟成されているとは思うのですが,若い杜氏さんの勢いというか,若々しさを感じさせるお酒でもあります。
前回紹介した勝駒と比して「ポスト勝駒」と称して推している酒屋さんもいらっしゃいました。
さらに造りの年数を重ねていくと,味わいもさらに深まっていくのではないでしょうか?
毎年一本ずつでも飲んでいって,新しい杜氏の成長と円熟をともに楽しんでいくのも非常に贅沢な飲み方だと思います。
こだわりのお酒のため,生産量も取扱酒店も限られているお酒ではありますが,これからの富山を代表するお酒として,ぜひ今のうちからご賞味ください。
「林 山田錦」
一升瓶のみの販売
¥3200(税別)
林酒造所HP
http://www.hayashisyuzo.com/
(2016年10月現在,HP上での『林』の販売はありません)