2017年04月17日

富山の地ビール飲み比べ・後編~越中風雅,立山エール

富山で作られている地ビールを紹介する,『富山の地ビール飲み比べ・後編』をお届けします。
前編はこちらの富山の地ビール飲み比べ・前編~宇奈月ビールをご覧ください。

さて,そもそも「地ビール」ってなんでしょうか?

 

地ビール(じビール)は、小規模ビール会社によるビール。日本では緊急経済対策の一環として、1994年(平成6年)4月の酒税法改正により、ビールの最低製造数量基準が2000klから60klに緩和されたことを受けて全国各地に誕生した地域密着・小規模醸造のビール会社による、地方ローカルブランドのビールを指す。(wikipediaより)

 

最近は「クラフトビール」とも言うようになりましたが,どちらも同じものです。
要は法律上最低限仕込まなかればならないビールの数量が大幅に緩和されたため,大手酒造メーカー以外でも,小規模生産出来るようになったわけですね。
法律が改正された1994年当時はビールとは全く関係のない建設・不動産会社などが,観光目的としてのご当地ビールを生産し,お土産用として人気を博しましたが,味わいや品質はまちまちで,段々と人気も下火になりました。
一方,日本の画一的なビールに飽き飽きしてきた人が多いのも事実で,個性的な味わいのビールを求める声が大きくなり,2000年以降再び地ビールへの脚光があつまり,最近ではクラフトビールブームが再び沸き起こっています。
そんな最近のクラフトビールブームについて,一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会の代表理事である藤原ヒロユキ氏はこのように述べています。

 

はたして定義は必要なのか?ビールはビールにほかならない。つまり、クラフトビールは規模の問題でも、造られている場所の問題でもないということだ。クラフトビールに必要なことは、造り手(ブルワー)がビールと真摯に向き合っているかどうか?ということでる。「クラフトビールとは、”ビールおたく”と呼ぶにふさわしい、”年がら年中ビールのことで頭がいっぱいな連中”が造りだすビール」なのである。そんなビールおたくなブルワー達が造る「伝統的なスタイルを厳守または踏襲したビール、独自の解釈でスタイルを進化させたビール、ユニークな副原料や醸造法を使った独創的なビール」である。(BREWING JAPANより)

 

そこで今回は,そんな富山のビールおたく,”年がら年中ビールのことで頭がいっぱいな”ブルワーたちのビールをご紹介したいと思います。

まずはこちら。

 

 

㈱オオヤブラッスリーの醸造する,『越中風雅』と『仁右衛門の黒』です。
オオヤブラッスリーは富山県出身の醸造士、大谷崇さんが2008年2月に開業した小規模のブルワリー(ビール醸造所)です。
どれほど小規模かというと,富山市婦中町にある自宅のガレージを改造して,醸造から瓶詰めまで全てたった一人で行っているというから驚きです。
そのオオヤブラッスリーを代表する銘柄がこちらの『越中風雅』です。

 

 

早速頂いてみましょう。

色味はややオレンジがかった黄金色。わずかに甘い香りが漂います。
一口飲むとスッキリとした喉越しと一緒に,甘いフルーティーな香りが鼻孔を通り抜けます。
深みはしっかりとあるんですが,のみ口はどこまでも軽やか。
文字通り風雅,上品で繊細な味わいですね。

続いてこちらも頂いてみます。

 

 

『仁右衛門の黒』
こちらはその名の通り,黒ビールです。
地元富山市古沢産の二条大麦をローストさせて醸造させてこのビールは,独特の香ばしさを放つ,深みのある味わいです。
しかし飲みにくというようなことは一切なく,喉越しはあくまでも爽やか。
越中風雅とも共通するこのさわやかな喉越しは,ブルワー大谷さんのこだわりなのかもしれません。
それにしても,これだけの味わいのビールをたった一人で醸造しているというのは本当にビックリです。
大谷さんは元々県内の醸造所から独立して今のブルワリーを立ち上げたそうですが,そのこだわりとビールづくりにかける情熱はこの2本のビールを頂いただけで伝わってきます。

越中風雅330ml 432円,仁右衛門の黒330ml ¥399。
他にも富山県産柿のハチミツをつかった『ハニームーン』や冬季限定のショコラビール,『ショコラ ノワール』など,どれもこだわり抜いたビールを醸造しておられますが,少量生産のためどこでも買えるというわけにはいきません。お求めは県内の酒店,もしくはオオヤブラッスリーの公式ブログをご覧ください。

 

もう一つご紹介したいのがこちら。

 

 

当HP的にはある意味,こちらが本命と言えるかもしれません。
『立山エール』です。
とは言っても,立山町で作られているビールではなく(残念!),滑川市にある北陸発酵工業株式会社さんの商品です。
北陸発酵工業さんは元々焼酎などを中心に生産している醸造所ですが,平成9年に富山県内では初めて発泡酒の製造免許を取得し,ビールの製造も行っています。
ラベルには発泡酒とありますが,これは大麦を使用しているための税法上の区分で,実際には麦芽エキストラクト(麦芽を糖化してシロップ状にしたものとバーレイシロップ(大麦を麦芽で糖化してシロップ状にしたもの)を使用した麦100%のビールとなっています。
この立山エールの最大の特徴は,ラベルを見てみると分かります。

 

 

「酵母入り生(非加熱処理)」
とあるのが分かりますか?
そう,立山エールは炭酸ガスを加えない無ろ過の瓶内醗酵熟成というとても珍しい方法で醸造されているんです。
ろ過せずミネラル豊富な酵母が生きたままの状態なので、風味が続き賞味期限が長いのも特長です。
仕込日や出荷日の日付が手書きなのも手作り感が溢れていて良いですね。
グラスに注ぐと,確かに若干濁っています。そしてガス圧が高めのため,いつまでも泡が消えません。
気になるお味は,見た目と裏腹にあまり苦味はありません。
かわりに酵母が生きているせいか,洋梨を思わせるような爽やかな香りとほのかな甘味が口の中に広がります。
同時にしっかりとしたコクもあり,グイッと飲み干すというよりも,ゆっくりしみじみと頂きたいビールですね。
立山エール ぺイルラガーは500ml 594円。
県内の酒店ほか,北陸発酵工業のHPからお取り寄せも可能です。

 

いかがでしたか?
前・後編と2回にわたってお届けした,富山の地ビールたち。
最近はあちこちで地ビール,クラフトビールの人気が高まっていますが,ここ富山にもどこに出しても引けをとらない,個性あふれる,そして何よりも美味しい地ビールが揃っています。
この時期,お花見のおともに富山の地ビールを抱えて,なんてとてもおしゃれだと思います。
とりあえず最初の一杯のビールも良いですが,たまにはこんな地ビールをゆっくりと,じっくり味わいながら頂くのはどうですか?

2017年04月11日

富山の地ビール飲み比べ・前編~宇奈月ビール

もう今年のお花見は行かれましたか?
花見に欠かせないものと言えば,お弁当とビール。ですよね。
でもそのビールの出荷本数が年々減ってきているようです。

 

 国内ビール大手5社の2016年1-6月累計のビール系飲料(ビール、発泡酒、第三のビール)の出荷量は前年同期比1.5%減で、消費者の節約志向や酎ハイ人気など好みの多様化で上半期は4年連続で過去最低を更新した。

 

近年若者のアルコール離れも叫ばれている中,発泡酒や第三のビールも加えたビール全体の消費が落ち込んでいるのは気になります。
ただその一方,地域で作られる小規模生産のビール,いわゆる「地ビール」は年々その存在力を高めているようです。

 

大手メーカーがビール需要の低迷に陥る中、2016年1-8月累計の全国主要地ビールメーカーの出荷量は前年同期を1.1%上回った。2010年に調査を開始以来、主要地ビールの累計出荷量は毎年前年を上回っており、地ビールが着実に消費者のすそ野を広げている事がわかった。

(中略)

こうした中、同期(2016年1-6月)の地ビール累計出荷量は前年同期比4.2%増と健闘した。苦戦する大手5社を尻目に、地ビールメーカーの3社に2社が前年の出荷量を上回り、好調ぶりを裏付けた。

(第7回 地ビールメーカー動向調査より)

 

確かに最近は大手メーカーも地方で地ビールの生産に乗り出したり,レストランやパブでも地ビールを取り扱っているところが増えてきています。
地域に密着した,小規模生産だからこそ出せる味わいが多くの人の心と喉を引きつけているのかもしれませんね。

そしてそしてここ富山にも,胸を張ってご紹介できる地ビールがちゃんとあるんです。
それで今回はそんな富山の地ビールをご紹介したいと思います。

まずはこちら。

 

 

富山の地ビールと言って真っ先に思いつくのがこの「宇奈月ビール」ではないでしょうか。
宇奈月温泉とトロッコ鉄道で有名な黒部・宇奈月はまた立山連峰の伏流から湧き出す水の美味しさで知られます。
その名水と地元「黒部産二条麦」をふんだんに用いて作られているのがこの「宇奈月ビール」です。
トロッコ電車とカモシカをデザインしたラベルもとても可愛いらしいですよね。

では早速頂いてみましょう。

 

 

三種類あるうちのまずは「十字峡/ケルシュ」から頂きます。
「ケルシュ」は元々ドイツのケルン地方で醸造されているタイプのビールのことを言います。
グラスに注いだビールは黄金色で,まさしくビール!といった面持ち。
味はスッキリとしていて,キレとホップの軽やかな香りが喉元を通り過ぎます。
日本人が普段飲み慣れているビールに一番近い味わいでとても飲みやすいですね。
万人受けするビールと言えそうです。

 

続いてはこちら。

 

 

「トロッコ/アルト」です。
アルトビールとは,上面発酵で作られるエールビールの一種です。
ビールの製造方法は大きく分けて二通りあり,一般的なビール(ラガービール)は低温で長時間発酵させて作られます。
役目を終えた酵母は底に沈んでしまうため,この製造方法を下面発酵と呼びます。
19世紀に考えられた,わりと新しい製法で。現在流通している一般的なビールは全てこの下面発酵タイプで作られています。
一方エールビール,上面発酵のビールは常温・短期間で作られます。発酵過程で出る炭酸ガスが酵母を浮かび上がらせ,上面で層を作ることから上面発酵と呼ばれています。
下面発酵のラガービールが普及するまで,ビールと言えばこのエールビールのことでした。複雑な香りと深いコクを特徴としています。
前置きが長くなりましたが,この「トロッコ」も上面発酵ビールの特徴をしっかりとだす,深いコクのビールとなっています。
色は濃い赤胴色で,しっかりとした香りが鼻孔をくすぐります。
でも一口頂くと,見た目とは対照的な軽やかな味わいにびっくり。
飲み進めていくうちに,甘みの中に潜む旨みとコクが徐々に姿を表します。
女性にもしっかりアピールできる,美味しくて素敵なビールです。

 

 

最後に控えるのがこの「カモシカ/ボック」です。
ボックビールは元々ドイツのアインベック地方が発祥で,ドイツ南部で広く親しまれているビール。
「アインベック」が縮まって「ボック」と呼ばれるようになったと言われています。
ドイツでのボックビールのラベルには雄ヤギが描かれていることが多いですが,これはドイツ語の”Bock”が雄ヤギを意味するため。
でもこの宇奈月ビールではヤギのかわりに,富山の特別天然記念物,ニホンカモシカが描かれていますね。
こうしたラベルの洒落っ気にも,ドイツビールに対するリスペクトや生産者の真摯な取り組みを感じます。
この「カモシカ」はロースト麦芽をふんだんに用いた,いわゆる黒ビールです。
黒ビールというとどうしても個性が強い,飲みにくい,というイメージがありますが,この「カモシカ」は全然そんなことはありません。
苦味はほとんどなく,ローストされた麦芽を基調とする芳醇な香りと甘みが口の中に広がります。
見た目とは裏腹に,ビールが苦手な方でも美味しく頂けるビールと言えると思います。
ゆっくり,じっくりと時間をかけて頂きたいビールですね。

ラベルにある「モーツァルト仕込み」というのは,発酵過程でモーツァルトの音楽を流しながら仕込んでいるところから名付けられています。
もちろんビールにモーツァルトの音楽を聞かせたからと言って美味しくなるわけではない(ビールにはモーツァルトとパンクロックの違いは分からない)んですが,それだけ手間ひまかけてじっくり,しっかり作っているということでしょうね。
三者三様それぞれの味わいを持つ宇奈月ビール。それぞれ単独で飲んでももちろん文句なしに美味しいんですが,「トロッコ」と「カモシカ」を1:1で割って飲むハーフ&ハーフなんて洒落た飲み方もお薦めです。
お値段は350mlで「十字峡」と「トロッコ」が420円,「カモシカ」が450円(ともに内税)となっています。
お買い求めは県内の酒店や大手スーパーのほか,宇奈月麦酒館のHPからお取り寄せも可能です。

今やすっかり富山を代表する地ビールへと成長した宇奈月ビール。
でも富山の地ビールはこれだけではありません。
次回は知る人ぞ知る,富山の隠れた美味しい地ビールをさらにご紹介したいと思います。
どうぞお楽しみに!

2017年03月06日

2017 富山のガラスと新酒フェア

1月2月とあれほど降った雪もすっかり溶けてなくなり,日々少しずつ太陽の日差しが増してきているのを感じます。

長かった冬ももうすぐおしまい。

春がすぐそこまでやってきていますね。

 

皆さんは春の訪れをなにで感じますか?

軒先のつららが溶けてなくなり,白一面だった庭に土の茶色と緑が顔を覗かせるとき。

桜の蕾が少しずつ大きくなって,やがてフワッと花を咲かせたとき。

滑川のホタルイカ漁解禁の知らせを聞いたとき。

春だなぁ,と感じて顔も心もホンワリとなりますよね。

 

富山の春を知らせる恒例のイベントが今年も開催されます。

2017 富山のガラスと新酒フェア

今回は告知です。

 

日本酒は寒造りと言って,冬の間に仕込まれます。
その冬に仕込まれたお酒が出来上がるのが春。新酒の時期です。

富山ではここ数年,県内の酒蔵全てが参加する新酒お披露目の利き酒会が行われています。
今年は3月18日(土)と19日(日)の両日,会場は富山市中央通りにあるてるてる亭1F ほくほく通りで11~18時で開催されます。

このイベント,年を追うごとに参加者もどんどん増えてきて,毎年レギュレーションが少しずつ変わって来ました。
2015年までは富山国際会議場で開催され,参加費を払うと誰でも好きなだけできたての新酒を味わうことが出来ました。
昨年2016年は会場がてるてる亭に変更され,飲み放題だった会がチケット制に変更されました。
これは賛否両論あったようで,新酒を心置きなく飲みたい参加者には不評だった一方,チケット制になったことで飲み方が上品になったと評価する声も聞かれました。
今年の会場はてるてる亭で変わらぬものの,再び飲み放題のシステムに戻ったようです。
参加費は一人¥2,000。予約などは必要ありません。
当初は一人¥1,000(カップルで¥1,000だった時も)だったんですが,仕方がないですね。

主催するのは県内の酒類を扱う卸業者,北陸酒販さんです。
卸業者が開催するイベントということで,主な目的は県内の酒蔵をもっと知ってもらい,販路を拡大すること。
県内の酒蔵が全て参加するということで,日本酒好きにはたまらないイベントですよね。
あ,でも酒飲みのおっさんばかりではなく,最近の日本酒ブームを受けて若い女性の参加者が多いのもこのイベントの特徴です。

ではどんな感じなのか,去年までの写真を交えてご紹介しましょう。

 

 

参加費を支払うと,利き酒用の可愛らしいガラスのお猪口を頂けます(このお猪口はもちろん持ち帰り出来ます)。
そのお猪口に酒蔵の生産者さんから直接お酒を注いでもらいます。
こうやって蔵人と直接コミュニケーションを取れるのも大きな楽しみの一つ。
お酒の特徴や仕込みの仕方,蔵の酒造りに関する取り組み方など,色々と教えて頂けます。
蔵にとっても自分のお酒を売り込んでファンを増やす大切な機会ですから,積極的に話しかけてみるととても勉強になりますよ。
気に入ったお酒があれば,帰りに購入することも出来ます。
試飲用のボトルの前に商品タグが置いてあるので,それをもらっていくと便利です。

それでは,これまで当HPでも取り上げた酒蔵を中心に見てみましょう。

まずは立山。以外のお酒①でご紹介した,清都酒造さん。

 

 

県内でも幻の酒になるつつある勝駒をいただける貴重な機会ですが,実はこの清都酒造さんのブースはあっという間にたたまれてしまいます。
お酒の展示即売という側面が強いイベントですから,生産量が少なくてこれ以上販路の拡大が出来ない清都酒造さんは,持ち込んだお酒がなくなるとブースを閉めてしまうんです。
実際にこのイベントでお酒を販売していないのはこの清都酒造さんだけ。
残念ですが仕方が無いですね。
出来たての勝駒を味わいたいならぜひ早めに会場にお越しください。

続いては黒部峡の林酒造さん。

 

 

立山。以外のお酒②で取り上げた『林』はおそらく持ち込まないと思いますが,主力商品の黒部峡も最近さらに美味しくなったと評判ですので,ぜひ味わってみてください。

そして立山。以外のお酒③で取り上げた高澤酒造さんです。

 

 

記事でご紹介した『八代仙』があるかどうかはその年によって違う(他のお酒よりも仕込みが遅いそうです)んですが,『獅子の舞』を始め髙澤酒造さん自慢の様々な銘柄を味わうことが出来ます。
特にこちらの酒蔵杜氏の龍一さんは毎年自らブースに立ってお酒を勧めてくださるので,ぜひ立ち寄って美味しいお酒と軽やかなトークを楽しまれてください。

他の蔵についてはぜひ自分で足を運んで確かめてることをお勧めします。
お米とお水という同じ原材料で仕込んだお酒が蔵によって,そして同じ蔵でも銘柄によって味も性格も全く違うことにきっとビックリすると思います。
どうしてこんなにもお酒の性格が違うのか?
それは飲む人によって好きな味が全く異なるからです。
甘口が好きな人,辛口が好きな人,酸味が好きな人,フルーティーなお酒が好きな人,ドッシリとした味わいが好きな人…お酒の好みはまさに千差万別。
このイベントに参加すれば,きっと自分好みのお酒に出会えるはずです。

出来たての新酒と自分にピッタリのな酒に出会える新酒利き酒会,

今年も『2017 富山のガラスと新酒フェア』に行こう!

2017年02月20日

立山。以外のお酒③ 八代仙 氷見にも行こう!番外編

2回にわたってお届けした,立山を飛び出して富山県内の各地をご紹介するシリーズの氷見編,

立山を眺めに氷見にも行こう!

氷見にも行こう!実食編~肉も魚も食べつくせ!!

の番外編,立山。以外のお酒③ 八代仙 をお届けします。
(以前の記事はこちら①こちら②をご覧ください)

 

氷見にも行こう!実食編でもお届けした,『氷見曙 髙澤酒造』さんのお話を少しさせてください。
髙澤酒造さんは氷見の老舗の酒蔵。創業は明治5年といいますから,もう150年近い歴史を誇る蔵なんですね。
主要銘柄は「曙」。
この名前に縁があって,第64代横綱,曙関の横綱昇進パーティーの際にこちらの曙の酒樽で鏡割りが行われたそうです。
現在の蔵の責任者は高澤 龍一さん。
まだ若い跡取りですが,平成12年から蔵元杜氏として伝統ある蔵を取り仕切っています。
蔵元杜氏というのは,蔵の責任者である蔵元と,お酒作りの責任者である杜氏を兼任している人のこと。
日本の酒蔵は伝統的に,オーナーである蔵元と杜氏は別々の人が役割分担していることがほとんどだったんですが,最近は若い蔵元を中心に経営だけではなく,仕込みまで行う蔵元杜氏が増えてきています。
実際髙澤酒造さんも龍一さんが跡を継いで酒造りを始めてから品質がグングン上がっているという評判です。
ただ,若さに任せて自分のやり方でお酒を醸すのではなく,氷見にも行こう!実食編でもお伝えしたように,昔ながらの槽(ふね)を用いてお酒を搾ったりと伝統的な酒づくりの手法を大事にしつつ,一本一本丁寧にお酒を仕込んでおられます。

その髙澤酒酒造さんのお酒の特徴といえば,氷見のお魚との相性が抜群なことでしょう。
料理との相性を大事にし,目立ちすぎず,かつ隠れすぎずに飲み飽きのこないお酒。
そんな最高の食中酒を目指して造られた髙澤酒造産のお酒の中でもお薦めの一本がこちら。

 

 

『有磯曙 獅子の舞』です。

こちらのお酒は富山県産の代表的な酒米,五百万石を50%まで研いで仕込んだ吟醸純米酒。
吟醸酒と言っても吟醸香はそこまで強くなく,お米の旨みがしっかりと感じられるお酒です。
酸味も程よく残っていて,ブリやノドグロなどの脂の乗ったお魚との相性は◎。
魚を食べた後にこの獅子の舞を一口飲み込むと,脂をすっと流しさりながら,魚の旨みを口の中いっぱいに開かせ,お酒自体もさらに美味しく感じられます。
こういうのこそ,マリアージュと言うんでしょうね。
文句なしに美味しいお酒です。

ただ,髙澤酒造産のお酒の中で今回特にご紹介したいのがこちら

 

 

八代仙(はったいせん)です。

このお酒,実は髙澤酒造さんのお酒のなかではちょっと変わったお酒なんです。
一言で言うと,白ワインのようなお酒。
口の中に含むと酸味がキリリときいた引き締まった味で,鮮烈な香りがたちのぼります。
初めて飲んだ時,富山にこんなお酒があるのかとびっくりしたのを今でもはっきり覚えています。
冷蔵庫でキンキンに冷やして,ワイングラスで頂きたいお酒ですね。
お米の旨みをしっかり活かした,日本酒らしい日本酒を醸しておられる髙澤酒造さんの中ではまさに特異な存在。
実際,龍一さんに八代仙が好きだと言うと,「他のお酒も飲んでよ」とちょっとだけ嫌な顔をされます(冗談ですよ)。
どうしてこのお酒だけキャラがこんなに違うのかというと,原料のお米に秘密があります。
このラベルをご覧ください。

 

 

「米生産元 くるみ営農組合」
とあるのがわかるでしょうか?
この八代仙は地元氷見の組合が生産している「春陽」というお米を使っています。
日本酒通でもほとんど聞いたことのない米の名前ではないでしょうか。
それもそのはず,実はこの春陽というお米は腎臓病や糖尿病患者など,タンパク質制限が課されている人のために開発された,「低タンパク米」なんです。
くるみ営農組合さんも地元の病院の入院患者さんのためにこのお米を生産されているんですが,八代仙はこのお米で醸されています。
お酒造りの最初の工程はお酒を研ぐ,つまり削ることです(実際,上の獅子の舞の精米歩合も50%,つまりお米を半分削っているわけです)。
その理由は,お米に表面にある糠やタンパク質など,お酒の雑味になる原因を取り除いて,心白とよばれる中心部分だけを用いて,スッキリとした香りの良いお酒を醸すためです。
ところがこの春陽というお米は元々タンパク質が少ないお米なので,白ワインのような香り高いお酒になるというわけです。

ただ一つ,この八代仙には大きな問題が…
それは生産量が少ないということ。
元々患者さんのためのものなので,お米の生産量自体が少ないです。
実際,髙澤酒造さんも八代仙は毎年タンク一本分に満たない位の量しか造れないそう(今年はタンク一本分仕込めたと聞いています)。
それで県内でもこの八代仙を取り扱っている酒屋さんは数えるほどしかありません。
しかもタンク一本分しか仕込めないということは,味の調整がきかない(通常日本酒はタンクごとに仕込んだお酒を混ぜ合わせて味を均一に調整します)ということなので,同じ八代仙でも毎年ビックリするほど違った味わいになります。今年はどんな味に仕上がったかな?こんな風に頂けるのもこのお酒の楽しみの一つですね。

ということで入手自体が難しいお酒なんですが,せっかくなのでぜひ氷見まで遊びに行って富山湾越しの美しい立山連峰を眺めて美味しいお肉とお魚を頂いて,そして髙澤酒造さんで八代仙を購入してください。きっと良い思い出になると思いますよ。

立山以外の美味しいお酒を取り上げるこのシリーズ,次回はどんなお酒をご紹介出来るでしょうか?
ぜひお楽しみに!

2016年10月11日

立山。以外のお酒②

美味しくて,でもまだあまり全国的には知られていない富山のお酒を紹介する第二弾。
今回は林酒造の「林」を紹介します。

林酒造さんは富山県の最東,朝日町に構える県内でも最古の醸造所。
創業が寛永三年(1624年)といいますから,400年近い歴史を持つ酒蔵です。
その林酒造産の主力商品は「黒部峡」。
林酒造という名前を知らなくても,「黒部峡」の名前を知っている富山人は多いと思います。
でも今回紹介するのはその「黒部峡」ではなく,「林」というお酒。
どういうお酒でしょうか?

林酒造さん,非常に歴史のある酒蔵ですが,実は最近杜氏さんが新しくなりました。
この蔵の跡取りである林秀樹さんが県外で修行を積んだ後,数年前に20代の若さでお酒造りの総監督である杜氏として戻ってこられました。
その際に,もっとこだわりぬいたお酒を醸したい!という思いで取り組み,生み出されたのが自身と酒蔵の名前を冠した新しい銘柄,「林」というわけです。
「林」として初めて仕込んだのが平成24年と言いますから,本当に県内でもまだまだ知らない人がほとんどの,新しいお酒です。
しかしそのこだわり具合は半端ありません。
実は「林」には原材料となるお米の種類別に,4種類の「林」が存在します。

「林 五百万石」,「林 雄町」,「林 美山錦」,そして「林 山田錦」。(以上全て純米吟醸)

林のあとに続くそれぞれが酒米の名前です。
もちろんそれぞれ個性も味わいも違ったお酒になるお米たちです。
普通,酒蔵は目指すお酒の方向性やその蔵の得意とするお米の品種といったもので使う酒米はだいたい決まっています。
(ちなみに富山では五百万石が多く用いられています)
しかし,「林」においてはそれぞれの酒米の個性を追求した,こだわりのお酒を醸したいという思いからか,上記の4つの「林」が存在するわけです。
ところが今年はその4つのうち,「雄町」は登場しませんでした。
杜氏である林秀樹さんが「雄町」の出来に納得できず,商品として出さなかったということなのです。
それほどこだわりと信念を貫いて醸されているのが「林」というお酒なのでしょう。

今回頂いたのはそのうちの「林 山田錦」です。

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早速口に含むと,スッキリとした飲み口とともに,上品なお酒の甘みが口の中に広がります。
その後山田錦特有のしっかりとした旨味とともに,キリリとした酸味が全体を支配します。
最後にもう一度,鼻孔の中に発酵を思わせる甘い香りが漂い,程よい余韻を残させます。
絶妙。

以前に五百万石も頂きましたが,こちらの方が旨味と酸味が際立っている感じを受けました。
ただ,どちらも美味です。

この時期に出荷されるお酒ですから,当然十分熟成されているとは思うのですが,若い杜氏さんの勢いというか,若々しさを感じさせるお酒でもあります。
前回紹介した勝駒と比して「ポスト勝駒」と称して推している酒屋さんもいらっしゃいました。
さらに造りの年数を重ねていくと,味わいもさらに深まっていくのではないでしょうか?
毎年一本ずつでも飲んでいって,新しい杜氏の成長と円熟をともに楽しんでいくのも非常に贅沢な飲み方だと思います。
こだわりのお酒のため,生産量も取扱酒店も限られているお酒ではありますが,これからの富山を代表するお酒として,ぜひ今のうちからご賞味ください。

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「林 山田錦」
一升瓶のみの販売
¥3200(税別)

林酒造所HP
http://www.hayashisyuzo.com/
(2016年10月現在,HP上での『林』の販売はありません)

2016年09月25日

立山。以外のお酒①

いつの間にかすっかり秋らしくなってきました。
朝晩は涼しさを通り越して肌寒いようになり,室堂では紅葉も色づき始めました。
田んぼではお米の収穫もほぼ終わり,新米が出回っています。
そう,新米の時期です!
富山の人たちは新米の出荷を心待ちにしていて,お米屋さんでの新米発売初日には行列もできるほどです。
食欲の秋。炊きたての新米。日本人ならたまりませんよね。
でも,お米の出番はそれだけではありません。
米どころ富山のお米と,名水百選にも名を連ねる富山の美味しいお水で出来るもの…
そう,お酒(日本酒)です!
その富山を代表するお酒といえばやはりそのものズバリ,「立山」でしょう。
でも実は立山って,立山町で醸されているお酒ではないんです。
それどころか,立山町には酒蔵自体がありません。残念ですね…
ただ富山には立山以外にも美味しくて,でも全国的には知られていないお酒がたくさんあります。
そんな富山の美味しいお酒を紹介していきたいと思います。

最初に取り上げるお酒はこれ。

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清都酒造さんの「勝駒(かちこま)」です。
ラベルの素敵な文字は芸術家の故・池田満寿夫によるものです。
10年ほど前まではそこまで知られているお酒ではなかったのですが,今では富山の酒好きの間では勝駒を知らないのはモグリと言われるほど有名なお酒です。
口当たりはスッキリとしていますが,飲むと口の中にお酒の甘みと旨味が広がり,抑えめな酸味が味を引き立てています。
美味しいです!!
ただ問題は最近めっきり手に入らなくなってきたということ。
ラベルにはこうあります。

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そう,小さな蔵がこだわって醸しているお酒なので,出荷量が少ないんですよね。
しかし人気は年々高まっているため,ますます入手困難の状態が続いています。
富山県内では特約店のみの取扱となっていて,入荷してもすぐに売り切れになってしまします。
都内では現在1件だけ勝駒を扱っている酒屋さんが確認されています。
こうやって紹介するとさらに品薄になってしまうので本当はあまり知られたくないのですが,本当に美味しいお酒なのでぜひ飲んで頂きたいです。
一般的に出回っているのは

大吟醸
純米吟醸
純米
特別本醸造 本仕込み

ですが,個人的におすすめなのは「純米」。
なんとこの純米,精米歩合が50%なんです。
吟醸,もしくは大吟醸なみにお米を削っています。
蔵の酒造りに対するこだわりを感じますね。
これから年末年始にむけてさらに入手が難しくなることが予想されますが,もし見かけたらぜひ飲んでみてください。
嗚呼,でもそうするとますます遠い存在になってしまう…

「勝駒 純米」720ml
¥1500(税別)